女の上に男が被さっている。自分の身に起こっていることが、どこか遠くの出来事のようだ。少し血を失い過ぎた。女の体は条件反射のように支配者のわずかな動作にも敏感に反応
するのに、意識は不思議と冷静に我が身を観察していた。痛みもそれ以外も男から与えられるものは全て熱へと変わる。無防備な肢体を追い立てるような熱量が襲った。視界さえまま
ならない中で、男の肩の向こうの空が見えていた。
撃ち抜かれた四肢、
世界の終わりのような黒い空、
戦争という名の虐殺を見下ろす丘の上、
踏み荒らされた王の城。
(…かみさま)
ギルベルト・バイルシュミットは祖国でなくなってゆく土の上で目を閉じた。
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