むかしむかしあるところ、23こある次元世界のひとつに、悪い魔女がおりました。この魔女は、Wという、不吉な呪いの名で呼ばれているのですが、ひどい悪戯者で、居城のあるバリアン国から隣のハートランド国へやって来ては、いろいろと悪さをしでかすのでした。
いたずら魔女のWは、さくら色の善き魔女よろしくほうきもしくはデッキブラシ、ではなくて、それはそれは大きなあやつり人形の坐る台座に跨って空を翔けておりました。鉛色の肌をしたその人形を、Wはギミック・パペット-ジャイアントキラーと呼んでおりました。たまに、空をゆく鳥とりをプレス式の胸に引き込んでは取って食ってしまうのが困りものですが(お洋服がとりの羽で汚れてしまいます)、乗り心地は抜群ですので、Wは好んで乗り回しておりました。
さて、Wがにび色のお友達とハートランド城の上にやってきたときのことです。すうっと風が凪いで、その瞬間、ジャイアントキラーのあやつり糸がぷつんと切れたのです。一本残らず、すべてでした。一瞬にして、あやつりを欠いた人形は崩れ落ち、光子になって消えていきます。
がたくたの台座からとり落ちて行くWは、眼下のハートランド城を見ました。そのバルコニーに、ひとりの男が立っています。うんと長い銀髪に、蒼い眼光を放つ男です。Wはその瞳と出会うと、まっすぐにそこへ落ちていきました。すとん、とWは石畳の上にポワントをして、おりたちました。
「我が弟子が世話になったそうだな」
バルコニーの男はそうWに話しかけてきました。近くで見ると、なるほど、よく顔かたちの整った男です。ずるずると長い髪も相俟って、女のようにも見えますが、声は確かに大人の男のものでした。
Wはしゃなりと男に笑みました。そういえば思いあたるところがあります。ジャイアントキラーのあやつり糸を断ったまものの姿は見覚えのあるものでした。Wは男に答えます。
「…天城カイト、だっけ?アンタ、あいつの師匠かぁ?」
「そうだ。気の毒に、まだ医務室から出られない」
「あ?おれ、ナニかしたっけ?」
とぼけるな、と男は言いましたが、その声色は怒りを滲ませるでもなく、ただただ平坦でした。
「お前は負かした相手に誰彼構わず魔力供給をしているようだが、供給された方はたまったものではない。お前の魔力が身の内で暴れまわり、行きつくところは排出口だ。だが強大な魔力がすぐに排出しきれるわけもなく、魔力はますます膨張して」
「勃起するってこったろ」
「それも三日三晩な。お前には分からないだろうがつらいというものではないぞ」
よくも涼しい顔でそんなことが言えるものです。Wはというとあのいけすかないカイトという名の魔術師が股間を抑えて医務室のベッドで転がり回っていると思うと笑いが止まりません。お父さんだったら大笑いして手を打っているでしょう。
「で、どうすんだよ。おれを捕まえてみる?できるもんならな」
「笑わせるな」
男はほんとうに、ふ、と笑いました。それはどうにもWの胸を締め付けてふつふつと苛立ちを湧き立たせるものでしたので、Wは即座にいちばんに忠実なまものの札を手の中に呼びよせました。
「お前は私には勝てない」
お喋りはそれでおしまいです。Wはカードを高らかに掲げ、まものの名を呼びました。「ギミック・パペット―」Wの雷撃のようにひらめく声が、彼の糸を引くのです。「へヴンズ・ストリングス!」
Wの前に現れたのはつばさ持つ隻眼の騎士です。あるじはまっすぐに男を指さして忠実なる騎士に命じました。「行け!へヴンズ・ストリングス!」騎士なことばなく、ことばより早くつばさを羽ばたかせます。天より下す刃が迫りきたとき、男は二枚のカードを手にしていました。そして、「デイブレーカーを召喚」―と静かな声で言い放ちます。瞬間、へヴンズ・ストリングスの振り下ろした刃をふたりの銀の兵隊が受け、火花を散らせました。
「はっ、なぁんだそれぇ。アンタの弟子の使ってた魔物…そんなのおれには通用しないなぁ!?」
「押し切れッ、へヴンズ・ストリングス!」とWが命じると、騎士はますますの力でそれに応えます。そして、ついにへヴンズ・ストリングスのつるぎはふたりの兵士を退け、あふれる光子に変えました。
へヴンズ・ストリングスはあるじの命令を続行し、そのまま剣を振り下ろします。そのときWがみた男の顔。どういうつもりなのでしょう。笑っています。それを見た瞬間、Wの中で、苛立ち、いえそれよりも、くやしみのようなものがじわりと染みだして、振り払うようにWはふたたび命じました。「やれぇッ!へヴンズ・ストリングス!」
だから、男の手の中にあるもう一枚のカードを見逃したのです。
「笑止」
もう一枚のデイブレイカーが男の指さきにありました。太陽のつるぎが風をまっぷたつに裂き、Wに突き立てられようとしていました。
―――やられた!そう舌打ちをし、勝ち誇る男の顔が―――一転、驚愕に歪む瞬間の享楽といったら!
「ぎゃあーはっはっはっはッ!見たか、アンタ、おいッ!」
Wが手にしていたのは、ディスティニー・レオ…ギミック・パペットの最後の一枚です。
Wの背後にあらわれた獅子の王は雑兵をつるぎの一振りで切り伏せて、王座に傅くWを守りました。勝負は既についていました。二体のギミック・パペット。不意打ちを狙った一体を含む三体のデイブレーカーは光子へかえり、それまで鉄面備をしていた男の顔は汗をひからせくくっと歪んでいます。Wはそれを見て、うんといい気分になりました。Wは王をカードの中へ戻し、そして男の喉元に剣をつきつける騎士を一歩引かせました。
「…そういや、名前を聞いてなかったなァ。アンタ、名前は?」
「…」
「名前はって聞いてんだろうが、インポ野郎」
そしてWが代わりに男のほうへ歩き出します。Wのことばで床に抑えつけられた男は、やっとのことで面を上げました。そして、「…クリストファー・アークライト」と静かに呟きました。
「ふぅん、クリス、クリスねぇ」
Wは石畳にはいずる男を眼下におきました。爪先を男の鼻先に当たるくらいに尖らせながら、何やら高揚した気持ちで男の名を繰り返していると、クリスはいらだったふうに言いました。「その呼び方は、父と弟以外に許していない。」
すぅ、と頭の先から彩冷えるのを感じて、Wは笑みました。それはそれは酷薄な笑みでした。Wはしゃがみこんで男のうつくしい顎をくいと持ち上げました。そして、言ったのです。
「いいぜ、クリストファー・アークライト。望むならそう呼んでやるさ。お前のかわいいお弟子ちゃんと、同じようにしてやる、」
「よ」、そのときです。Wの身体は強引に石畳に押し付けられました。
「…っ!?…!…っっ!!」
Wは何が起こったのかまるで全然分かりません。気づけば石畳に頬をくっつけたWの目の前に男のつま先があります。さっきまでWがそうしていたように、男は平然として足元に這いずるWを見下ろしているのでした。何がなんだかわからず、不可視のちからに支配されたまま口もきけずにいるWに、男は静かに声を降らせてきました。
「魔術師たる私が、何の策もなくフルネームを名乗ると思ったか?」
Wは頬を赤く染め荒い呼吸をくりかえしながら、自分の中にちがう魔力が流れているのを感じました。それは、目の前の魔術師、クリストファーのものに違いないのでした。
「名はものを支配する。お前はその力をまるで理解していないようだが…お前が私の真名を呼んだとき、私とお前の間に縁が生まれたのだ。お前が術を心得ていれば、私を支配することも可能だったろうが…逆に私が縁を利用してお前に魔力を流し込んだ。つまり」
「ひゃうッ!?」
「お前は私に支配されている、ということだ」
瞬間、石畳の上のWの体が飛び跳ねました。胸の中で心の臓がどくんどくんと脈打っています。Wの鼓動ではなく、魔術師の鼓動で。そのリズムはWが追いつけないくらいに早くて、どんどん体が熱くなってきます。自分のものでない魔力が、自分の全身に流れている!Wはその感覚にふるいもだえました。熱が体中から染み出して、汗となって、なみだとなって、Wを濡らすのです。
「魔力を供給したことはあっても、されたのは初めてか?」
「あ、あぅっ…ぅっ…」
「苦しいだろう?だが、カイトが供給された量の魔力は…そうだな、こんなものか?」
「んっ…ヒぃッ!ああああ〜〜〜ッ!!!!」
あらたにWの中に注入された魔力は、ずんッとWの肉を震わせて、その内側を駆け巡りました。Wはヒクヒクとふるえて自分の体を穿つちからに身を開くしかありません。目尻に涙を浮かべながらWはかぁっと熱い息と一緒に悪態をつきました。
「ぃいッ…て、てめぇ…ッこここ、ころすっ、ころすぞッ、おれのまりょくぜんぶ、そそぎ込んでッ、」
「よくそんなことが言えたものだ。自分の手がどこを押さえているか見てみるんだな。」
ハッとして、Wは自分の右手が股間に触れているのをみました。カッと頬が赤くなります。そう、石畳に体を押しつけながら、Wはわけのわからないかゆみを感じていました。体中をかきむしりたいくらいの。でもそれは少しちがう、と分かりました。Wの肌という肌が、めいっぱいに穴をひらいて、触れるものを求めているのです。触れてほしい。さわってほしい。この熱の行き場所を教えてほしい。Wの目の前にはそれをかなえてくれそうな存在がいました。Wはじわりと滲みながら男を見つめましたが、男は一向にそうするつもりはなさそうでした。男は初めて愉快げに口元を歪めました。
「くくくっ…いい格好だな、W。人形遣いのお前が、人形のように見えるぞ」
「うぅっ…ひぃ…ンっ…!!!」
「いや、人形ならばこんなにも浅ましくは啼くまいな。お前の嬌声は、耳に心地いいぞ…」
男の声はいちいちぞくぞくとWの肌を疼かせました。ですが、魔術師が言ったことばはWの中のプライドに触れたのです。人形遣い…そう、Wは人形を操る魔女です。父から与えられたその力は、決してよその魔術師に負かされるものであってはなりません。Wは身の内のじぶんの魔力を掻き集め、糸として紡ぎあげました。この男を、支配し返してやる…!Wは身をよじりながら、渾身の力で5本の指を男に向けて伸ばしました。
糸は男の腕の一本を捕らえました。やった!不意をついてWはふたたび男を石畳に引きずり落とすことに成功し、即座に男を支配すべくしびれる体を動かします。魔術師はまさかという顔をしていて、Wは勝ち誇ってその男に馬乗りになりました。
「こうなったらっ…!直接っ、てめぇにっ、魔力を供給してやるっ…!!念入りのやつをなっ!!」
そう言って、Wはおもむろにスカートをたくし上げました。ちょっと、だいぶ、背伸びをした、まっくろ紐パンティーが、魔術師の眼前にさらされます。
たいせつなパンツをこれ見よがしに見せつけて、クリストファーはさぞ怯みかえっているだろうと表情を伺うと、魔術師はさほど顔色を変えてはいません。「それで?」とでも言いたげな憮然とした表情をしています。「それで、どうする?」
すると、Wは困ってしまいました。今まで屈服させた相手には褒美としてキスをくれてやり、咥内での体液の交換による魔力供給をしてきたのですが、Wの言った念入りの、最高の魔力供給、それは、膣内での体液交換…つまりは、セックスなのです。ですが、Wはまだキス以上は知りません。男の目の前に下半身を突き出したはいいものの、そこから先はWにとって、未知の領域でした。どうしよう?どうしよう?Wのそこは、男の魔力に刺激され、すでによくよく潤っていましたが、どうやって、なにを、迎え入れ、魔力を渡しすればいいのか、皆目分かりませんでした。
やがて、男は呆れたとでも言うようにはーっと息をつきました。
「ヒっ…!?」
気付いた時には、男の両手がWの腰をがっしりと掴んでいます。おおきな手でした。
「お前の初心は焦れる。せめて恥じらいでもあれば、手解きくらいはしてやるものを…」
「や、やめ…ぇ…」
「セックスも知らないくせに、男の前に肌着をさらすような痴女には…相応の扱いをしてやらねばな」
言うが早いか、男の両手がぐぐっと力を込めてWの下肢を下に押さえつけてきます。Wは「ぃ、やあっ!?」と鋭敏な悲鳴を上げましたが、Wは、そこに自分が求めるものがあることを本能的に知っていました…魔女の本能ではなく、メスの本能によって。
「あ、ひぃあっ、ンンンン――――ッ!!!」
Wのランジェリーに覆われたヴァギナが、男の腰に擦りつけられました。布越しではありましたが、魔術師の腰についたものの熱さが、Wのやわらかいところに伝わってきます。いいえ、あつくなるのは、Wの方なのでしょうか…Wの快感を覚えたばかりの芽はじくじくとしてしっかり起き上がっています。花びらはくちゅりとぬれて、熱をあつめ、心臓と変わらないくらいに激しく脈打っています。
男はWの腰を掴む手を離さずに、力任せにがつんがつんとWのからだを上下させています。だんだんかたくなってくる男の腰とふれあうたび、紅潮し、嗜虐的な笑みを浮かべるクリストファーを見るたび、Wの背骨はびりびりとしびれて、自由な筈の両手も、力が抜けて、動かなくなってしまうのでした。
「も、もぉ…いれてぇ…っ」
Wはもうばかのようになってしまって、それでもメスとしてこれから起こることをちゃんと分かっていて、言いました。「いいだろう、」とクリストファーが汗をひからせ微笑んで、Wの目尻に浮かんだなみだを拭ったのが、うれしくて、せつなくて、Wはやすやすと、男の手に従って、石畳の上に身をよこたえました。でもやっぱり、どこか悔しくって、Wは目を背けます。立場がまるで逆になり、自分に覆いかぶさってくるクリストファーをみつめるのがどうにもたまらなかったのかもしれません。
「ゆだん、しなきゃぁ、おれがかってたのにぃ…」
「それは間違いだな。最初から、勝負は決まっていた」
「うそだっ」
「嘘ではない」と魔術師は言いました。「見るがいい」そう言って、魔術師は人差し指を空に掲げました。うつくしい、ゆびです…かれが指さしたのは銀色のそら。機械仕掛けの、空をも覆いつくさんばかりの星。天蓋星、ダイソンスフィア…クリストファーはWと対峙したその時から、かれを呼び出していたのです。圧倒的な、実力差でした。Wは最初から、クリストファーにもてあそばれていたのです。
すっかり力の抜けたWのからだから、下肢を覆うパンティーを引き抜くと、とろとろとした愛液が糸を引きました。Wの顔はもう真っ赤っかになっていて、はやくこのどうしようもない熱を解放してほしいと思っていました。そのための準備は、ばんたんのようです。クリストファーは下穿きをくつろげて、固くなったものを取り出しました。Wの股が固くしたものは、硬度をもってWの始めてを貫きました。
「あーっ!!んくぅっ…あぅっ!あっあっ!!!」
クリストファーの挿入したペニスが、Wの中をあばれまわります。Wの身体じゅうに、魔力を行き渡らせて…それは、燃え尽きそうな熱を灯すおそろしいものでしたが、見下ろすかれの長い銀の髪が、カーテンのように垂れ下がるのをみていると、どこか守られているように感じました。それは、ひどくWを安心させました。クリストファーの魔力がWを満たすのは、いつのまにか、このうえない快感に変わっていたのです。
「ク、リ、スッ…クリスぅうっ…!!!」
Wはめいっぱい股を広げ、その両手、その両足でもって、かれを迎え入れました。もっと深く、もっと奥まで。抜き差しをくりかえすペニスを、はなすまい、とWはきゅうぅと膣の中をひきしめました。かれはくぅ、とせつなげな声を出して、Wの中で、いってしまいました。それと一緒に、Wの中でも、よろこびがはじけました。
「はうぅ…クリス…ぅ…」
Wは、はぁはぁと肉の蠕動と一緒にあつい吐息を吐きだして、かれの名を呼びました。するとクリストファーは、同じようにあつい息を吐きながら、キスをくれたのでした。
*
「せっくすっ!」
ハートランド国いちの魔術師、クリストファー・アークライトの腰に跨って、Wはそう騒ぎ立てていました。
「せっくすするぞっ、クリス!せっくす!セックス!」
「ああ、お前というやつは、少し、黙れっ!!」
そう怒鳴り返すクリスは、すこしやつれたように見えます。ハートランド国にいつくようになった人形遣いの魔女が乗っかってくるたび、魔力を存分にくれてやっているせいで、いかなクリストファーといえども、身体がもたないのです。
けれどこの魔女は欲が深いぶんだけ器が広く、いくら魔力を注いでも、足ることはないのです。こんなことになるとは、とクリストファーは困り果てていました。
「おい、クリス。やんねぇのか?やらないならおれ、カイトんとこにいくぞ。あいつのいちもつ、悪くねぇからな。ぜつりんってやつ?逆に、こっちがもたねぇっていうかー、うんやっぱ、カイトのとこ、行こっかなー」
「…おい待て、お前、カイトとも寝たのか?」
「あ、やっべ」
クリスは、衝動的にWをベッドに転がします。Wはしてやったり、という顔をするので、クリスはしまった、と思いました。今日のパンツは青白のボーダーで、布に覆われたWのそこは、もう濡れそぼっています。
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