おまえは、W。にばんめのWだよ。 Wのからだを拭きながら、かれらのうちのひとりがそう言いました。よんばんなのににばんめとはおかしな話です。すると、かれはWに後ろを見るように言いました。Wが入っていたのと同じカプセルが、そこに、五つ並んでいました。ご、から、ひとつ飛ばして、さん、に、いち。順番にばんごうをつけられたカプセルを見て、なるほど、とWはなっとくするのでした。 カプセルのなかのかれらはWのきょうだいなのだそうです。数字のおおきいほうがお兄ちゃんなので、Wはにばんめの兄にあたるということです。それでは、なぜWだけがほかのきょうだいたちよりはやくカプセルから出ることになったのでしょう? それは、お前が失敗作だからだよ。W。 めざめるのがはやすぎたんだと大人たちは言いました。おまえのあたまは狂者のあたまだ。わたしたちの期待するようにはおまえは生まれてこなかったが、成功したおまえのきょうだいたちと比べて並べてみせようね。そう言ったおとなたちはなんてやさしいんだろうとWはおもいました。しっぱいさくのWを生まれさせてくれるなんて、なんてやさしいひとたちなんでしょう。役立たずのWは、大人たちの役にたつためにいっしょうけんめいがんばらなくてはならないとおもいました。 Wはきょうだいたちのカプセルをながめるのがすきです。なかでも、いちばんめの兄弟、Wにとってゆいいつ、兄にあたるカプセルのなかを眺めているのがいちばんすきです。Wはふつうのこどもでいえば7さいくらいの見た目をしていますが、あにはWよりすこしだけおとなにちかいです。Wよりちいさい番号のおとうとたちといえば、となりのVはWよりすこしおさないくらいで、ごばんめなんてまだあかくてちんくしゃの肉のかたまりみたいなもので、みていたってなにも面白くありません。だからやっぱり、Wはいつもおなじカプセルにはりついて、あきもせずそれを見つめているのでした。 W、 Wはぺたりとちいさな手をガラスに押し当ててきょうだいをながめています。ガラスの向こうがわに浮かんでいるきょうだいはWより背がたかくて、ながーい髪がふわふわ水溶液のなかでおどっています。そのかみはぎんいろにきらきらかがやいて、ときどきしたから浮き上がるあわをまとってははなれていきます。そのまぶたはぴったりととじられています。きずひとつないきれいなまぶたです。 W、お兄ちゃんにきみの姿を見せてあげているんだね。 うしろからずん、ずん、と突かれながら、Wはそのまぶたのむこうの瞳にはやく出会いたいとおもいました。その瞳のいろはなにいろでしょうか。Wと同じちのいろをしたあかでしょうか。それとも、水面をそのままうつしたような青でしょうか。Wはカプセルにつめをたてて、ああ、となきます。おとなのおおきなからだにおされてWはますますカプセルのなかの兄にすがります。Wは気狂いのいろのあかをみひらいて、どぴゅどぴゅとなかに入ってくる液体をうけとめました。あたまのなかでぜんぶぜんぶがはじけてはじめからおかしなあたまがおかしくなってしまいそうです。Wはカプセルのなかをみています。ようをおえたおとなのペニスがWからでていきますなんかいもふるえてでてきたものがWのおなかのなかでちゃぽちゃぽおとをたてますWはカプセルのなかのあににすがりつくようにしてくずれおちますWはねがっているのですはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく はやくうまれておいで、X。 ねえぼくいっしょうけんめいがんばっているでしょう? |
愛慾の羊水
12/02/24